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6話. 十メートルの呪い

مؤلف: 6jay
last update تاريخ النشر: 2026-09-26 21:58:32

泰輝の硬い靴音が、冷たい大理石の廊下を遠ざかっていく。VIP応接室の床に座り込んでいた絵奈は、喘ぐ胸を押さえ、息を整えた。ブラウスの内側の先端はまだ熱く疼き、泰輝の手つきが残した刺激を生々しく吐き出していた。

傲慢で潔癖な統括理事、天城泰輝。その無責任な背中へ呪いを浴びせたかったが、妙に胸の隅で、正体不明の不吉な予感が芽生える。三メートル、五メートル、七メートル……。

遠ざかるほど、廊下の向こうの規則正しい足音は霞んでいく。同時に、絵奈の背骨の神経の奥で、奇妙で薄気味悪い現象が起き始めた。

――チッ、チチッ。

チューニングの外れた古いラジオのように、骨の奥で静電気が弾ける鋭い破裂音が神経を削る。

「え……? これ、何……」

ただごとではない兆候を察し、絵奈は震える手でソファを支え、よろめきながら立ち上がった。下腹の内側の温度が、異常な速度で跳ね上がる。単なる微熱や興奮のレベルではなかった。

煮えたぎる油を血管へ直接流し込むような、猛烈で荒々しい熱が下腹の奥を揺さぶる。骨盤の内側がぴんと固まり、息が喉で詰まった。その時刻、エレベーターホールの角を曲がっていた天城泰輝も、歩みをぴたりと止めた。

「……ッ!?」

喉から押し殺した獣のような声が漏れる。応接室に残る絵奈との直線距離が、十メートルを超えた瞬間だった。

――閃。

目の前が白く漂白されるほどの、悍ましく破壊的な感覚の嵐が、二人の中心を同時に殴った。合璧印に隠されたルール。身体的距離が十メートルを超えると、神経信号に過負荷ノイズが発生し、感覚が一気に暴走する。

「あああっ――!」

絵奈は裂ける悲鳴を上げ、床へ乱暴に倒れ込んだ。見えない巨大な鉄棒で下腹を抉られるような、想像を超える超高密度の催淫刺激が頭の奥を残酷に切り刻む。

下が抑えきれず溢れ、熱い体液がスカートの裏地を湿らせた。息もできないほどの巨大な絶頂の波が、一秒に何十回も全身を容赦なく絞る。視界が暗転し、舌が喉へ巻き込まれそうな極限の痛みを伴う快感だった。

廊下にいた泰輝の状態は、さらに惨憺たるものだった。

「げほっ……! くッ……うっ……!」

大理石の壁を掴む暇もなく膝をつき、床へ無惨に突っ伏す。距離離脱で一気に増幅された残酷な神経信号は、彼のものを引き裂くほど大きく凶暴に膨張させた。

生地が擦れるたびに、皮膚を金たわしで擦るような極限の快楽と痛みが脊髄を砕く。息を吸うたびに肺胞が裂けるようで、心臓が狂ったように跳ねた。

このまま五秒でも距離が開けば、脳血管が切れるか心臓が止まる――その恐怖が本能的に頭をよぎる。

『距離だ……!』

かすむ視界の中で、血の色の警告灯がけたたましく点る。

『十メートル……! 離れれば死ぬ……!』

泰輝は財閥後継者の体面も、貴公子の威厳も下水へ捨て、床を這い始めた。前がカーペットに擦れるたびに噴き出す悍ましい絶頂を、血の涙を呑んで耐える。応接室の絵奈も本能的に扉へ向かい、爪を立てて血の涙を流すように這い出した。

「助けて……ひっ、はあ……扉、開けて……!」

――カチリ、ギイ。

二人は十メートルの境界を越え、三メートル以内まで近づいた。半開きの応接室の隙間から、絵奈の震える手が伸びる。泰輝は喘ぎながら敷居までもう少し這い、汗に濡れた手でその手を掴んだ。

――ふうっ。

嵐のように暴れていた神経系の破壊的なノイズが、嘘のように収まった。感度が距離増幅前の水準へ急落し、地獄のような痛みを伴う快感の波が、ゆっくり引き潮のように退いていく。廊下の床に絡みついたまま、荒い息を吐く二人。

泰輝は立ち上がろうとして、また掌を床についた。絵奈も敷居を越えた位置から動かない。離れたときに何が変わり、近づいたときに何が止んだか。もう知らないふりはできない。

絵奈の頰は涙と汗でぐしゃぐしゃになり、泰輝のオーダーシャツは汗に浸り、肌にねっとり張りついていた。

「……見たか」

掠れた声で絵奈を見下ろし、歯を噛み締める。

「俺たちはもう……十メートルの外へ逃げられない」

泰輝は廊下の突き当たりを見た。病院を出てから体はずっとおかしかった。絵奈と同じ部屋に入ったとき息が楽になった理由も、今なら想像がつく。絵奈は彼の腕を掴んだ手を離せなかった。

二人は視線を外せずに喘いだ。もはや相手の生存と破滅は、完全に自分の体と一つに結ばれている。逃げることも、拒むこともできない、残酷な運命の罠だった。

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